「ゲゲゲの女房」

丈二

2008年07月06日 11:22



我が師、水木先生の奥様布枝夫人が記された「ゲゲゲの女房」を読んだ。

帯文をご紹介する。
「巨人・水木しげると連れ添って半世紀。赤貧の時代、人気マンガ家の時代、妖怪研究者の時代、そして幸福とは何かを語る現在・・・常に誰よりも身近に寄り添っていた妻がはじめて明かす、生きる伝説「水木サン」の真実!
布枝夫人にとって、夫と歩んだ人生とは、どんなものだったのか・・・・・!?」 

水木師の半生は彼の残した様々な作品(「ボクの一生はゲゲゲの楽園だ」「コミック昭和史」など)でご存知の方も多いと思う。
でも布枝夫人のことを知る人は少ない。師の作品に時々登場する顔の長いのんびりした感じの女性、といった印象位しかないだろう。
著書の詳しい紹介は略すが、「悪魔くん」が認められるまでの超貧乏時代、どうやって食べていけばいいのか、又そんな中長女が生まれた喜びとミルク代が無く苦労されたエピソードなどが印象深い。
そして講談社から連載の依頼が来てようやく貧乏から抜け出し、「テレビくん」が児童漫画賞を受賞して今までの苦労が報われる時が来る。

その時の夫人の気持ちを紹介しよう。

「『ああ、ついに来るべきときが来たのだ』という、深い感慨に包まれていたのです。そうです、これほど努力をしている水木が『世間に認められないまま終わるはずはない。この努力がムダに終わるはずはない』と、自分が心の奥底でずっと信じ続けていたことに、このとき、はじめて気づいたのです。そのときが、ついにやってきたのです。『信じていてよかった』と心から思いました。(中略)私は、あの暑い夏の晩に、仕事をする水木の後ろ姿に感動して以来、彼の仕事を信じ続けてきました。そのことは、私の生涯最大の『誇り』なのです。」

感動が止まらなかった。
人は小説でもドラマでも主人公に感情移入して物語を読んでいく。
布枝夫人と供に、どん底から這い上がった師の栄光を祝福した。

「ゲゲゲの鬼太郎」がTVアニメ化され、プロダクションを作り、今度は殺人的な忙しさに追われ、走り続けて10余年。
仕事は少しずつ減り、80年代は数年間仕事が無い時期があったが、逆に家族の絆を強めることになる。



上の写真はついこの間、NHK教育TVで放映された「知るを楽しむ・人生の歩き方」の4回シリーズ「水木しげる・百歳まで生きるでしょう」最終回の映像である。

86歳になっても元気溌剌な師と、彼に寄り添う夫人の仲睦まじいお姿に、「いつまでもお幸せに」と 祈らずにいられなかった。

関連記事