「栄町ボトルネック」
しかし居酒屋やカフェ以外の店は全て閉まっていて、改めてこの時間に市場へ来ても無駄なことを知った。
「栄町ボトルネック」や「うりずん」「生活の柄」など有名な居酒屋もあるが、夕食は「おでん・東大」で摂ることにして、市場を後にした。
地図を見ながら店を探すが見つからない。8時を過ぎているから開店しているはずだが。
このあたりは市場と違う雰囲気が漂っている。スナックや旅館が多い。
店を探して
栄町社交街を彷徨っていると、それと分かる女が近づいてきた。
「お兄さん、飲んでかない?」「いや、おでんの東大を探しているんだ」「東大はここよ。まだ開いてないわ」 店の看板の灯りが消えている。分からない訳だ。
「千円ポッキリで飲めるわよ」 千円で飲める訳がない。「いいよいいよ、ありがとう」早々に栄町を後にした。こんなやりとりも
ディープスポット探索の醍醐味だろう。
気を取り直して、前回前々回も訪れた
桜坂へ向かった。
「千鳥の店」が開くのを待ちながら、「ヤギ料理・さかえ」か「おでん・悦っちゃん」で腹ごしらえといこう。
まず「さかえ」のドアを開けたが「ごめんなさ~い。ひと回りしてまた来てみて~」のママの声。
それではと「悦っちゃん」の小さなドアを開けてみたがカウンターは若者達で埋まっていた。
食事無しで「千鳥の店」に行こうかと電話してみたが留守電になっている。
やれやれ行くところが無い、と思いつつ桜坂社交街(タイトル写真)を漫ろ歩いた。
金曜日の夜9時前だが、以前より営業している店が減っているようだ。
ひと通り桜坂を歩き回って再び「
さかえ」のドアを開けると、カウンターのお客さんが一斉に「いらっしゃい!」と声を掛けてくれた。ちょうど1席空いたところだった。
ヤギ汁
8席のカウンターは勿論、座敷もグループのお客さんで満席。
ママのなおみさんは相変わらずてんてこ舞い。お母さんの体調がイマイチとのことで一人で切り盛りしている。
早速オリオンビールと前回食べ損なった
ヤギ汁を注文。
お通しはパパイヤのなます。ヤギ汁を待つ間、サービスの肉味噌をかじる。
右隣りの初老のお客さんが話しかけてきた。東京在住だが寒い冬だけ沖縄にロングステイしているそうだ。私もそんな身分になってみたい。
1時間近く待たされただろうか、待望のヤギ汁が目の前に。
途中、サービスのお通しはちょくちょく出てくるし、お隣さんとの会話ははずむし、注文を待たされたという感じはしない。
味は、見事なものだった。肉の臭みは全く無いし、フーチバ(よもぎ)は香ばしい。そして出し汁は全部飲みたくなるほど美味い。実際左隣の若いお客さんは全部飲み干した。
サービスのヤギ刺し。右は島豆腐。
10時過ぎ、ヤギ汁を食べ終わり、もう一度「千鳥の店」に電話してみたが相変わらず留守になっている。
どうやらお休みのようだ。千鳥さんに会うのは諦めてここ「さかえ」で腰を据えて飲むことにした。
ヤギ刺しを注文したが売り切れとのこと。それではと
島豆腐を注文したが、ママは僅かにに残ったヤギ刺しの切れ端をサービスしてくれた。
只でヤギ刺しが頂けるとはラッキーだった。島豆腐も仄かに塩味が効いて美味い。
ママはお客の注文に「今日中には作るから待っててね~」と、他の店では考えられないような返事。お客も「待ってるよ~」と心得たものだ。
彼女の人柄に惹かれて今夜もお客が引きも切らない。
右側のお客さんがお帰りになり、左側の若いカップルと沖縄を語り合った。横浜から来たそうだ。彼は仕事でよく来沖するという。仕事とはいえ沖縄の空気を吸えるだけでも羨ましい。
間髪おかず二人連れが入ってきてカウンターは再び満席。北海道から来たとのこと。
一番奥の美人以外は全て内地のお客だ。しかも常連。
ドアを開けて中を覗くお客に「いらっしゃい!」とか「また来てね~」とか皆で声を掛ける。
左の池○○さんに
フーチバ酒をご馳走になった。苦味が効いて美味いが、酔いが早い。
後ろのビア樽席が空き、直ぐにお一人さん(40歳位)が入ってきて我々の話し仲間に加わった。
初めて沖縄に来て、たまたまこのお店の灯りを見つけたと言う。この人も「さかえ」ファンになることは間違いない。
この店のフレンドリーな雰囲気は竹富島の民宿を思わせる。
4人で記念撮影
若い池○○さんが私を「格好いい」と言ってくれた。「白花」に参加するようになって以来服装に気を遣ってはいるが、嬉しかった。
時刻は閉店の11時を回ったが、お客は誰も帰ろうとしない。
ママも看板の電気は消したが、サービスの半玉サラダや揚げ出しを作り続けている。
この日は沖縄とは思えないほど冷たい風が入口から吹き込んでいたが、お客同志の会話は益々盛り上がっている。
日付が替わる頃、我々4人は店を後にしたが、いつ閉店するのだろう・・・。
お互いのメアドを交換して解散。
私は深夜、人気の無い国際通りを歩くのが好きだ。満ち足りた気分でホテルへと向かった。
ー続くー