水木先生・今日のお言葉(10)

丈二

2007年06月18日 06:03

二見書房「悪魔くん(1)」表紙

久しぶりに「本日の水木サン」より師のお言葉を紹介します。
今日は「悪魔くん」誕生の裏話。


「本日の水木サン」 1月18日のお言葉全文をご紹介します。

「東考社で、僕は好きなようにやっていいと言われ、僕や桜井氏を苦しめている貧乏を打ち砕く魔法の話を考えた。
セリグマンの『魔法』を読んでいると、ものすごくたくさんの魔法の話が出てくる。ああ、昔から人間は幸福になるために、こんなにたくさんの魔法考えていたのだなと思い、この本とゲーテの『ファウスト』をヒントに、ノート2冊分のストーリーを作って『悪魔くん』を開始した。
とにかく、長年の貧乏は、あの半死半生の目にあった戦争より苦しいほどで、一山百円の腐ったバナナを買って食うのが無上の楽しみという、人には話せないような思いをさせる貧乏を、せめてマンガの中だけでも、魔法の力によって撃破できたらと、ペン握る手にも思わず力が入るほどの意気込みだった。」

 「悪魔くん・千年王国」より

以上が昭和38年に誕生した「悪魔くん・千年王国」の経緯である。以前にも紹介したが水木師はこの作品が認められて人並みの生活ができるようになった。記念すべき作品である。
タイトル画像は昭和51年発行の復刻版。お気づきのように髪の毛で頭が尖っていて、目つきが悪い。
オリジナル作品では悪魔くんは正義の味方ではないのだ。自分を神童と思いこみ世界征服をたくらむ、文字通りの“悪魔くん”だ。実際主人公は非業の最期を遂げる。


その後「ガロ」に作品が連載されるようになり、少年マガジンに連載された「ゲゲゲの鬼太郎」で大ブレイク。
「鬼太郎」と同じくして、「悪魔くん」はリニューアルされ、正義の味方で我々に親しみやすいキャラクターとして再登場した。

朝日ソノラマ「悪魔くん」より

上の画像のとおりマイルドな佇まいである。桜井氏がモデルとなった眼鏡キャラ情報屋クンも登場する。


「エロイム・エッサイム、我は求め訴えたり…」

リニューアル版の悪魔くんは洗練されたストーリーとハッピーエンドで好評を得た。そしてTVドラマ化され主人公の悪魔くんを金子光伸(名子役)、メフィスト役を吉田義夫(名脇役、悪役が多かった)が演じ、中学生だった私も毎回見たのを憶えている。


実写版「悪魔くん」。吉田義夫のメフィストはハマリ役だった。










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