「空気人形」
静岡シネギャラリーで「空気人形」を見た。
以前TBSの「王様のブランチ」映画コーナーの紹介を見て、ずっと気になって
いた。カンヌ国際映画祭でスタンディングオベーションを受けた、是枝裕和監督
の最新作である。
是枝監督といえば「誰も知らない」に出演した柳楽優弥君が同映画祭で主演男優賞を受賞し、去年公開した「歩いても歩いても」では樹木希林が女優賞を総ナメにした。私も登場人物のリアリティーある台詞に舌を巻いたものだった。
R15指定。主人公の空気人形は昔の言い方をすればダッチワイフだ。
しかし是枝監督は国内では稀有のファンタジー映画を創りあげた。
「私は『心』を持ってしまいました。
持ってはいけない『心』を持ってしまいました。」
「古びたアパートで、持ち主である秀雄(板尾創路)と暮らす空気人形ー
空っぽな誰かの『代用品』。
ある朝、本来持ってはいけない『心』を持ってしまう。秀雄が仕事に出かけると、
洋服を着て靴を履いて、街へと歩き出す。初めて見る外の世界で、いろいろな
人間とすれ違い、つながっていく空気人形。
ある日、レンタルビデオ店で働く純一(ARATA)と出会い、その店でアルバイトをすることに。
密かに純一に想い寄せる空気人形だったが、彼の心の中にどこか自分と同じ空虚感を感じてしまうー。」(パンフレットより)
秀雄と暮らす空気人形
都会の片隅に暮らす凄まじいばかりの孤独な人々・・・。
年増OL(余貴美子)、ビデオ屋の店長(岩松了)、老人(高橋昌也)、未亡人
(富司純子)、おまわりさん(寺島進)、そして空気人形の生みの親の人形師
(オダギリジョー)。
「私は嘘をつきました。
心を持ったので嘘をつきました。」
「心を持つことは、切ないことでした。」
空気人形(ペ・ドゥナ)のつぶやきが心に浸みる・・・。
ペ・ドゥナ、29歳の韓国の女優である。山下敦弘監督の「リンダリンダリンダ」に出演して日本のファンも多い。
彼女の片言の日本語が、命を吹き込まれた人形のイメージにピッタリなのだ。
彼女が心を持ち、初めて外の景色を見て「きれい・・・」とつぶやく。
その時の裸身の美しさは感動的だ。
人形師(オダギリジョー)
「私はなぜ心を持ってしまったのか?」
その答えを探して、人形師に会いに行く。
彼は傷ついた人形を何も聞かずに「おかえり」と暖かく迎えてくれた。
自分の作った全ての作品に愛情を注ぐ人形師。
彼の出演シーンは短いが、オダギリジョーの優しさ溢れる存在感が大きい。
そして、
「きれい・・・」孤独な引きこもりの女の子が部屋から外を見てつぶやく、ラストシーンの哀しさ、美しさに息を飲んだ。
「空気人形」、本年度を代表する作品のひとつになることは間違いない。
で、ぴーやし的評価は・・・、★★★★(星四つ)
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