映 画
日本映画・裏ベスト3
「仁義無き闘い」シリーズなどで一世を風靡した(今は亡き)深作欽次監督70歳の時の作品。
「キネマ旬報」2000年度ベスト10、第5位。(因みに第2位は「ナビイの恋」)
非道い映画である。40人余りの中学生を離れ小島に拉致して、最後の一人になるまで殺し合いをさせようと言うのだから。
R-15指定となり、各方面から批判が集中したが、テリー伊藤氏のように作品として高く評価する人もいた。
私もこの作品は何度も見た。
一番の見どころは教師役のビートたけしの演技である。
島中に散らばった教え子達に有線で「みんな、友達が死んでつらいかもしれないけど、元気出さなきゃダメだぞ~」と放送するシーンは印象的。彼がこの作品で助演男優賞を受けなかったことは今もって納得がいかない。
主演は藤原竜也。役になりきり良い演技だった。クラスメートの前田亜季。彼等と行動を共にする山本太郎。彼は最高にカッコ良かった。
そして同じクラスメートの柴咲コウと栗山千明。初めてこの映画を見た時は二人とも殆ど無名だったが、インパクトは群を抜いていた。(画像は笑いながらクラスメートを撃つ柴咲コウと、ナイフを構える栗山千明)
さらにこの映画最大の謎のシーン。重傷を負った藤原を介抱する前田に「風邪ひくなよ」と傘を差し出すたけし。何故?
この残酷なストーリーの底に流れるものは 愛 だ。愛を感じる者だけが受けることのできる感動が有る。
続いて裏ベスト2。
70年代の「日活ロマンポルノ」の中から神代辰巳監督の
「恋人達は濡れた」
ピンク映画とバカにしてはいけない。日活の鬼才による「濡れたシリーズ」の第三弾。
第四弾の「森は濡れた」(1973年)も凄い作品。封切一週間で上映禁止になってしまった。原作はサドの「悪徳の栄え」。(この作品については別の機会に)
「恋人達は濡れた」のビデオを入手するのに何年かかっただろう。DVD化されず、絶版となったビデオを根気よく探し、待った。
学生時代に初めて見て衝撃を受け、神代作品をずっと追いかけてきた。名作は数知れない。「青春の蹉跌」の萩原健一と桃井かおり。「赤い髪の女}の宮下順子と石橋蓮次。愛欲の底にある人間の内面を鋭くえぐり出す。
さて「恋人たちは濡れた」は、過去を棄てた流れ者の主人公(大江徹)が、とある寂れた港町で映画館のアルバイトをしながらひっそりと暮らしていたが、彼を知る幼なじみとその恋人(中川梨絵)が現れ…。
この作品の見どころはズバリ絵沢萌子(写真下)。小さな映画館の女主人。夫への不満、歩んできた人生への疑問…。そのやりきれなさを見事に表現している。鳥肌が立つような演技である。やがて主人公と深い仲になり、生き甲斐を見出したかに見えたが…。
後年、絵沢萌子はTVドラマ「警部・古畑任三郎」に加藤治子の妹役で出演したことがあったが、今はどうしているだろうか?
最後、主人公大江徹と中川梨絵は文字通り濡れてしまう…。寂寞と無常を感じるラストである。
神代辰巳はその作品のBGMに必ず土地の民謡や歌謡を使い、作品にリアリティーを与えている。この「恋人達は濡れた」も大江徹の奏でる(出演者が映画音楽も担当しているのがいかにも日活的)哀愁漂うギターの音色と共に民謡が効果的に使われている。
そして裏ベスト3。
巨匠大島渚監督の「愛のコリーダ」。1976年の作品。
昭和11年におきた「阿部定事件」を題材にした作品。セックス表現が日本では充分に撮影できないとして、フランスで制作された。主演は藤竜也(吉蔵)と松田英子(定)。中島葵(吉蔵の妻)、小山明子(芸者)などが絡む。
藤竜也も今ではすっかり老けてしまったが、この作品では男盛りのフェロモン全開の演技である。
欧米での上映を意識した日本情緒たっぷりの、美しい映像が特徴。ともすると不自然な日本趣味に陥りがちな映画が多いが、さすが大島渚。見事な映像である。
もうひとつの見どころはやはり吉蔵と定との絡み。定の女の情念がヒシヒシと伝わってくる。
ただしこの“女の情念”を感じるには、リージョン1のノーカット、無修正版のDVD(右画像)を見る他無い。実際1976年の日本上映版は映画の体を成していない。25年ぶりに再編集されたDVD「愛のコリーダ2000」(画像左)では、状況は判断できるが定の情念までは伝わって来なかった。
この作品で最も印象に残ったシーン。終盤で、軍国主義を突き進む日本を象徴するような兵隊の行進に、俯きながらすれ違う吉蔵の姿(画面右)。もう死を予感しているかのような表情が私の脳裏に焼き付いている。
随分長くなってしまった。(^_^;)最後までお付き合いありがとうございました。m(__)m
「キネマ旬報」2000年度ベスト10、第5位。(因みに第2位は「ナビイの恋」)
非道い映画である。40人余りの中学生を離れ小島に拉致して、最後の一人になるまで殺し合いをさせようと言うのだから。
R-15指定となり、各方面から批判が集中したが、テリー伊藤氏のように作品として高く評価する人もいた。
私もこの作品は何度も見た。
一番の見どころは教師役のビートたけしの演技である。
島中に散らばった教え子達に有線で「みんな、友達が死んでつらいかもしれないけど、元気出さなきゃダメだぞ~」と放送するシーンは印象的。彼がこの作品で助演男優賞を受けなかったことは今もって納得がいかない。
主演は藤原竜也。役になりきり良い演技だった。クラスメートの前田亜季。彼等と行動を共にする山本太郎。彼は最高にカッコ良かった。
そして同じクラスメートの柴咲コウと栗山千明。初めてこの映画を見た時は二人とも殆ど無名だったが、インパクトは群を抜いていた。(画像は笑いながらクラスメートを撃つ柴咲コウと、ナイフを構える栗山千明)
さらにこの映画最大の謎のシーン。重傷を負った藤原を介抱する前田に「風邪ひくなよ」と傘を差し出すたけし。何故?
この残酷なストーリーの底に流れるものは 愛 だ。愛を感じる者だけが受けることのできる感動が有る。
続いて裏ベスト2。
70年代の「日活ロマンポルノ」の中から神代辰巳監督の
「恋人達は濡れた」
ピンク映画とバカにしてはいけない。日活の鬼才による「濡れたシリーズ」の第三弾。
第四弾の「森は濡れた」(1973年)も凄い作品。封切一週間で上映禁止になってしまった。原作はサドの「悪徳の栄え」。(この作品については別の機会に)
「恋人達は濡れた」のビデオを入手するのに何年かかっただろう。DVD化されず、絶版となったビデオを根気よく探し、待った。
学生時代に初めて見て衝撃を受け、神代作品をずっと追いかけてきた。名作は数知れない。「青春の蹉跌」の萩原健一と桃井かおり。「赤い髪の女}の宮下順子と石橋蓮次。愛欲の底にある人間の内面を鋭くえぐり出す。
さて「恋人たちは濡れた」は、過去を棄てた流れ者の主人公(大江徹)が、とある寂れた港町で映画館のアルバイトをしながらひっそりと暮らしていたが、彼を知る幼なじみとその恋人(中川梨絵)が現れ…。
この作品の見どころはズバリ絵沢萌子(写真下)。小さな映画館の女主人。夫への不満、歩んできた人生への疑問…。そのやりきれなさを見事に表現している。鳥肌が立つような演技である。やがて主人公と深い仲になり、生き甲斐を見出したかに見えたが…。
後年、絵沢萌子はTVドラマ「警部・古畑任三郎」に加藤治子の妹役で出演したことがあったが、今はどうしているだろうか?
最後、主人公大江徹と中川梨絵は文字通り濡れてしまう…。寂寞と無常を感じるラストである。
神代辰巳はその作品のBGMに必ず土地の民謡や歌謡を使い、作品にリアリティーを与えている。この「恋人達は濡れた」も大江徹の奏でる(出演者が映画音楽も担当しているのがいかにも日活的)哀愁漂うギターの音色と共に民謡が効果的に使われている。
そして裏ベスト3。
巨匠大島渚監督の「愛のコリーダ」。1976年の作品。
昭和11年におきた「阿部定事件」を題材にした作品。セックス表現が日本では充分に撮影できないとして、フランスで制作された。主演は藤竜也(吉蔵)と松田英子(定)。中島葵(吉蔵の妻)、小山明子(芸者)などが絡む。
藤竜也も今ではすっかり老けてしまったが、この作品では男盛りのフェロモン全開の演技である。
欧米での上映を意識した日本情緒たっぷりの、美しい映像が特徴。ともすると不自然な日本趣味に陥りがちな映画が多いが、さすが大島渚。見事な映像である。
もうひとつの見どころはやはり吉蔵と定との絡み。定の女の情念がヒシヒシと伝わってくる。
ただしこの“女の情念”を感じるには、リージョン1のノーカット、無修正版のDVD(右画像)を見る他無い。実際1976年の日本上映版は映画の体を成していない。25年ぶりに再編集されたDVD「愛のコリーダ2000」(画像左)では、状況は判断できるが定の情念までは伝わって来なかった。
この作品で最も印象に残ったシーン。終盤で、軍国主義を突き進む日本を象徴するような兵隊の行進に、俯きながらすれ違う吉蔵の姿(画面右)。もう死を予感しているかのような表情が私の脳裏に焼き付いている。
随分長くなってしまった。(^_^;)最後までお付き合いありがとうございました。m(__)m
この記事へのコメント
>随分長くなってしまった。(^_^;)最後までお付き合いあり がとうございました。m(__)m
どういたしまして。
すごい裏へスト3でした。やっぱり、ぴーさんは目のつ けどころがちがいますね。すごいです。
どういたしまして。
すごい裏へスト3でした。やっぱり、ぴーさんは目のつ けどころがちがいますね。すごいです。
Posted by 小豆 at 2007年06月09日 20:18
小豆さん、こんばんは。
いえいえ、ぴーやしは只の映画オタクです。
ちょっとした好奇心と、先入観無しで素直にモノを見る心を大事にしています。
いえ本当は只の好色オヤジです(^^ゞ
いえいえ、ぴーやしは只の映画オタクです。
ちょっとした好奇心と、先入観無しで素直にモノを見る心を大事にしています。
いえ本当は只の好色オヤジです(^^ゞ
Posted by ぴーやし at 2007年06月11日 22:14
しばらくネットオチしてましたが…出ましたか~!裏ベスト!バトルロワイヤルが1位とは、唸りましたデスよ。ホント、北野さんの存在感、凄かったですよね~。アレは彼じゃないとああいう味って出ないんじゃないですかね~。うんうん、コウさんと千明さんもあんまり有名じゃなかったんですよね。ちと子どもの前では見られないんですが、また見たくなりましたヨ!阿部サダ映画、面白そうです。見かけたら借りてみます。
Posted by 葉月 at 2007年06月13日 18:43
葉月さん、こんばんは。ご返事遅れてすみません。
「バトルロワイアル」は子供達には(いや大人でも)なかなか理解できない作品ですから一人で鑑賞されるのが宜しいかと…。
「愛のコリーダ」は是非ご覧になってください。2000年版はレンタルショップで気軽に入手できますヨ。
「バトルロワイアル」は子供達には(いや大人でも)なかなか理解できない作品ですから一人で鑑賞されるのが宜しいかと…。
「愛のコリーダ」は是非ご覧になってください。2000年版はレンタルショップで気軽に入手できますヨ。
Posted by ぴーやし at 2007年06月15日 22:39